まちの未来を語る!七ヶ宿町、ベガルタ仙台とライズ・コンサルティング・グループがディスカッションを開催

2023年7月20日、七ヶ宿町さま、ベガルタ仙台さまとライズ・コンサルティング・グループの3者で「七ヶ宿町様の交流人口の増加」をテーマとしたグループディスカッションを開催しました。2023年1月に当社と七ヶ宿町さまがまちづくりの課題解決に関する連携協定を締結したことを受け、開催する運びとなりました。町役場職員、町内の関連団体、ベガルタ仙台クラブスタッフが参加し、町の将来像とまちづくりの課題解決について活発な議論や意見交換が行われました。

人口規模が1,300人に満たない町の未来像とは

ライズ・コンサルティング・グループ(以下、ライズ)堀越:

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。この会はみなさまの中にある想いを引き出し、その上で次のアクションを検討していくことを目的としています。
1月の協定締結式後の対談では、七ヶ宿町から提示された定住人口減少の課題に対し、ベガルタ仙台さんからはベガルタハウスを介した交流人口、定住人口増加の支援策を検討していきたい、というご意見がありました。また当社CEOの北村からは、連携協定を機に我々が自らワーケーションを実践して仕事の生産性向上を探り、その経験を交流人口や定住人口の増加につなげることができないかというアイディアをお伝えしました。
今日は実現の可否を一旦横に置いて、七ヶ宿町さんがありたい未来の姿を想像し、そのために必要な要素を探っていくような、未来創造型のセッションにしていきたいと思います。
セッションを始める前に、ベガルタ仙台さんと七ヶ宿町さんから、これまでの取り組みや現在の状況についてご紹介をお願いいたします。

ベガルタ仙台小野寺:

まず、ベガルタハウスの建設及びこれまでの取組みの経緯についてお話しいたします。我々ベガルタ仙台は特定の親会社を持たず、宮城県と仙台市が大株主であり、県民一人ひとりが株主の「市民クラブ」です。この規模のJクラブとしては珍しい立ち位置にあります。Jリーグ全体は社会貢献活動「シャレン!」を掲げていますが、ベガルタ仙台としては我々が持つ企業や自治体、各種団体などとのネットワークと、小さいながらも地元での情報発信力があるという2つの強みを生かすことを基本方針に置いています。
そんな中で七ヶ宿町と出会い、少子高齢化や交流人口拡大、空き家・空き地問題などの課題を聞かせてもらったことが、ベガルタハウスを中心とする一連の活動につながりました。
「DASH村」みたいな活動ができたらいいよね、というイメージがありまして、話題作りとして、元選手である平瀬、菅井による架空の工務店「ジャイキン工務店」を立ち上げました。そして、菅井が棟梁として実際に改修工事に参加し、クラウドファンディングでは独自の返礼品を用意して、120万円ほどの支援を得ることができました。
なお、返礼品の中には、菅井と一緒に改修作業を一緒に行う権利というものもあり、あっという間に予定数をクリアしました。「ほぼ完成式」を経て、現在も畑などを少しずつバージョンアップしていて、運営開始から2年目に入ったところです。一方で日頃の管理については町の方にご負担いただいている部分が多く、今後はその改善も模索していきたいと考えているところです。

七ヶ宿町:

まずは町の概要をお伝えします。人口は今日現在で1,300人を切っています。ただし、この中には町内にある私立高校の職員や生徒さん、またダム近くにある高齢者養護施設の利用者さんが含まれているため、純粋な七ヶ宿の人口と考えると1,100人くらいかと思われます。
この人口は町という規模では全国で下から2番目に小さな規模です。しかし1位は東京電力福島第1原発の影響が色濃い福島県の浪江町ということで、実質1位と言っても差し支えないと思います。
環境面での懸念点としては冬の豪雪が挙げられます。宮城県内で七ヶ宿町と同じくらい降雪する市町村は、仙南地区ではほかにありません。春から秋にかけては過ごしやすい環境なのですが、豪雪のイメージがあまりに強く、定住につながっていない現状があります。
ただし裏を返せば人口規模がとても小さいがゆえに、住民一人ひとりに対する手当、対策がスムーズかつ手厚いということが強みだと考えています。大きな自治体では断念してしまうような事業でも、七ヶ宿では思い切りよく実現できることもしばしばあります。例えば、移住を見込んで土地と戸建て住宅を提供する事業を行ったところ、若い人が殺到し、人口は増加傾向にあります。元の分母が小さいので増加率としては宮城県で1位でした。

ライズ堀越:

ベガルタ仙台さん、七ヶ宿町さん、ありがとうございます。冒頭申し上げたように、本日は将来のありたい姿に視点を置き、改めて何をしていきたいかを考える機会にしたいと考えています。
まず、2050年問題として取り上げられる「超高齢化社会」と「温暖化・環境問題」をテーマとして取り上げます。これらの問題に対して、ベガルタ仙台さん・七ヶ宿町さんとして何ができるかを、2グループに分かれてざっくばらんに考えてみてください。「こうしたい!」という思いを引き出すことが目的なので、どんな意見も正解で、何でも思ったことを発言してください。

ベールに包まれたコンテンツ、現在の魅力と変化していくことへの葛藤

図1:グループディスカッションの様子1

図1:グループディスカッションの様子1

 
こうして2グループに分かれてのディスカッションが始まりました。まずはアイスブレイクということで、お互いの情報を交換しつつ、徐々に活発な話し合いへと移行していきました。
両グループからは以下のような意見が出ました。

(グループ1)ライズ塩原:

グループ1では町から人口流出を防ぐことと、どうやって新たな人を町へ呼び寄せるかを2つの大きなテーマとしました。
どちらにも共通している問題は「いかに雇用を生むか」であると考えました。先ほど七ヶ宿町さんから、移住希望者に土地と戸建てをプレゼントしたという話がありましたが、例えば七ヶ宿町で起業をした人に対して町として各種補助や支援を行った上で、我々ライズによるコンサルティングも格安で受けられるようになったらどうだろうか、というアイディアが出ました。町からは生活環境に対するサポートがあり、起業や事業活動に対してはコンサルファームから支援を受けられるというのは、起業家や経営者からは喜ばれる良い発想なのではと思います。
また、一度町を離れた人をどう呼び戻すかという点に関しては、教育面の充実が必要という意見が出ました。学校の勉強については、通信教育などで補うことが可能ですが、習い事の種類が限られてしまうことがネックになるとを危惧しました。これを逆手にとって、パルクールなどのように町の自然環境を活かしたここでしかできない習い事コンテンツを開発するのはどうか、というアイデアがでました。

(グループ2)ライズ首藤:

まず、雪を利用して、氷のホテルやかまくらなどの観光コンテンツを生み出すのはどうだろうかという案が出ました。
地球温暖化の影響なのか、町の積雪量が昔より減っているという話を聞きましたが、一方で首都圏以南と比べると気温は変わらず低いままです。このお陰で七ヶ宿源流米の美味しさが保たれているという情報提供があり、やはり食事は人を呼び込む際の鍵になりそうだという話になりました。加えて水資源が豊富で美味しいという点にも着目しました。町内3カ所の水源はそれぞれに味の違いがあるそうです。
土地がたくさんあって、農家さんも増えつつあるため、「自給自足の町」というアプローチもありではないか、という話になりました。

未来の在りたい姿に向けて、具体的に着手できることはなにか

図2:グループディスカッションの様子2

図2:グループディスカッションの様子2

 
続いて、ライズから高齢者のためのリカレント教育や、街の規模を小さくしてインフラのコストを抑えるといったアプローチについて事例紹介があり、先のディスカッションで出た意見・アイディアを踏まえてワークショップへと移りました。
「x年後に七ヶ宿町、ベガルタハウスがどういう姿になっていたいか」をテーマとし、先ほどのグループ内で自由にディスカッションを行いました。両グループともに熱い意見交換が交わされ、以下のような将来像が提示されました。

(グループ1)ライズ塩原:

町に長く住む住民にとっては、町が発展してほしい反面、変わってほしくない気持ちもあるという意見があり、バランスよく自然と都会が融合した町になるために変えていく部分と変えずに残すべき部分の区分がとても重要だ、という意見が出ました。ベガルタハウスは自然体験の拠点として最適なので、活用法を引き続き探っていくことが大切だという話になりました。
雇用と人口をどう増やすかという課題については、例えば平日時間の空いた主婦の方がアルバイトとして働けるワークスペースとしてベガルタハウスを利用するのはどうだろうかという案が出ました。
ベガルタハウス側の視点では、取り組みを通じて3年後にはファンの増加に繋げ、5年後には何かあった時に相談できるような、町民に頼られる姿をイメージしました。その上で、試合開催日にスタジアムで町の特産品であるイワナなどのフードを販売し、認知度向上につなげられないか、という意見が出ました。
最後にベガルタ仙台さんも冒頭で仰っていたように、DASH村のような展開を行うことで有名人の誘致や町から有名人を輩出することに繋げ、観光客の聖地巡礼を誘う、といった意見が出ました。

(グループ2)ライズ首藤:

人口について、自然減より社会増が上回り結果的に増える町というイメージを描きました。土地と建物を格安に販売すればすぐに手が上がる状況がある中、実際に購入したあとのリフォーム工事手配など、住むまでのサポート体制をもっと充実させてはどうか、という意見が出ました。
また実際に移住する前にお試しで住むことはできないか?という意見が出ており、これに関連して、スキー場のアルバイトなど移住前にお試しで七ヶ宿に住んでみることができる機会を増やしたら良いのでは、というアイディアも出ました。
また、七ヶ宿は4種類のホタルが同時に飛ぶ珍しい地域、という情報があり、観光のコンテンツは思っていた以上に充実していることがわかったので、いずれの問題・課題でも告知・PRの方法が重要だという話になりました。

七ヶ宿町の今後の取組に関するアイディア

活発な意見交換、アイディアの出し合いを経て、いよいよ最後のセッションとして、具体案を検討しました。それぞれのグループの結論は以下のようなものになりました。

(グループ1)ライズ塩原:

ワークショップで導いた「なりたい姿」の中から、「七ヶ宿の自然を守る」と「ベガルタ仙台のファンを増やしたい」にテーマを絞りました。
自然を維持するためには、発展のために手を入れる部分と、現状維持する部分の棲み分けをしっかりする必要があります。しかし、自然を維持するにはメリットとして何があるかを明確に示すことが必要なので、「環境保全×ビジネス」の発想がより重要となります。そこで、森林再生を通じた新規事業や町が地場産品の流通窓口として運営する「なないろストア」の活性化などが必要だ、という話になりました。
一方、ベガルタファンを増やすアイデアとしては、まず公民館のようなところでパブリックビューイングを開催するという案が出ました。加えて、町民を試合観戦に招待したり、ベガルタの選手・スタッフが町に来て交流イベントを開催したりすることなどが挙げられました。
無計画な企業誘致などによって環境や景観が汚染されては七ヶ宿町らしさを失ってしまうので、自然を活かしながら人を呼ぶという想いを無くさずにやっていく必要がある、と結論づけました。

(グループ2)ライズ首藤:

先のディスカッションで出た意見をまとめると、自然減より社会増による人口増加をあるべき姿とし、移住を決めた人に対する手厚い住居サポート、移住を迷っている人へお試し住宅や体験移住の提供を行うのが良いという話になりました。一方、その段階へ至るまでに町を知ってもらうためのコンテンツを開発・提供し、効果的なPRを行う必要があります。結論として、これらを実現させるために現状最も足りないものは、個別の施策を統合するビジネスプロデューサーのような存在であるということになりました。
例えば町に移住して、自力で古民家をいちからリフォームする様子をYoutubeで公開している人がいるそうですが、そうした町内あちこちで生まれているコンテンツを、町のコンテンツとして統合させていかなければならないということです。

刺激的な意見交換を実践につなぐ

今回のディスカッションを通して、やりたいことの棚卸しができ、今後取り組むべきことの大枠が見えてきたのではと感じます。七ヶ宿町さまの担当者からは「ライズさんと協定を結んだとき、町長が思い描いたのは、町の中からは出てこない発想や手法の提供でした。今日体験したようなことを役場の若い職員、有識者も含めてやってみたい」との感想を頂きました。またベガルタ仙台さまからは「皆さんと話し合ったことがとても刺激になったので、色々なアイディアを持ち帰って改めてできることを考えていきたい」と今後の抱負を語りました。
これからも七ヶ宿町の社会課題に向けて、3者は様々な形で意見交換、実践を検討してまいります。